『俳句斜説』・4月号 【衒う。】
てらう[(衒う)]①/②/③わざと変わったようすを見せる。「少しもてらったところがない・奇を―」【三国/三省堂】
「こいつめ」とかの「め」や女性言葉の「の」といった表現を使用した俳句を専門家の間でも時々みかけます。
『箸先にまろぶ子芋め好みけり』 村山古郷
『じゃんけんで負けて蛍に生れたの』 池田澄子
知られた句で好む方も多いのでしょうが、私はついて行く気にはなれません。
最近は、政治・行政や金融政策といった社会の大黒柱であるべきところにまで奇策を見かけるようになりました。具体例を一々あげつらいませんが、王道を外れた政策は決して長続きしません。変化球が有効に成立する条件を少し冷静に考えてみるだけで、その理由は明らかです。また、王道を貫くことは奇抜さを求めることより遥かに至難の業であることも、忘れてはならないところです。凡庸のそしりを恐れず真っ直ぐに進むことは、勇気のいることでもあるのです。
さすがに俳句では「平凡であること」は評価されないことなのでしょう。しかしそれ以上に、奇を衒うことは避けるべきではないか、と私は考えています。変哲さの限度にはきりがなく、紅白の衣装合戦に似た現象に陥りかねません。歌そのものよりもステージの奇抜さが話題になることは、歌い手にとっての本望ではないはずです。
『スパイクの置き場譲りて卒業す』
NHK「俳句さく咲く!」の今年度最後の優秀句は、ノンスタイル石田のこの句でした。衒いが微塵もなくて、結構胸に届きました。相方の不祥事にもめげずに頑張ったこともさりげなく話題になって、ふと、俳句を始めた頃に書いたこんな記事が思い出されました。
シデコブシ 【長良公園/27日】
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