『俳句斜説』・11月号 【常用漢字】

文化庁の広報誌「ぶんかる」に、常用漢字表の意義などが3回シリーズで掲載されています(*009~011)。
 *http://www.bunka.go.jp/prmagazine/rensai/kotoba/kotoba_009.html

一部を抜粋・要約しますと、

○社会生活に関連する言語表記は、この表を参考にするのが望ましい。
○情報交換には漢字の範囲を定め共有しておいた方が便利である。
○発信側は、その範囲の漢字を使うことで安心して伝えられる。
○受け取る側はその範囲の漢字を身に付けておけば理解できる。

念の為ですが、常用漢字表の思想は単に易しさを勧めているだけではありません。「謙そん」や「進ちょく」といった「交ぜ書き」は、むしろ「謙遜」や「進捗」にしよう、つまり生活への馴染み具合を漢字の使用基準にしようというものなのです。言葉は意思伝達の道具ですから、漢字使用本来の発想と言えます。

一般の社会生活とは次元が違うんだと言わんばかりに、俳句ではそのことが軽視されています。しかし、前にも一度話題にしましたが、飯田龍太は「現代俳句は、活字の効用に馴れてその魔力を忘れている」と言い切っています(『自選自解句集・作品の周辺/講談社』)。ここでの「活字の効用」とは、言ってみれば「漢字の効用」と考えてもいいでしょう。句の全景より表記の効果に期待する傾向を戒めています。

俳句で許容される漢字の範囲については、どうやら確たる定めはなさそうです。常用漢字に限るとするのは流石に色気のないことですが、敢えて難読漢字を勧めることにも私は反対です。「こんな漢字を使っても良いのだろうか、世間に伝わるのだろうか」、と心の片隅に思い浮かべる。俳句が能・狂言の様な伝統芸能に陥らないためにも、その程度の一般社会との関わり具合は気にするべきだと思います。



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      紅葉 【ふれあいの森10/29】

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